的場昭弘『最強の思考法「抽象化する力」の講義』

 

 大学で夏休みの集中講義を受けた気分になる本。

「抽象化」という、すごく知的活動のためにすっごく重要な概念について説明されている。物事を分類して整理する時に、より大きなカテゴリーに括っていく。(たとえば、犬、猫は動物に分類できるけど、犬、猫よりも動物のほうが大きな括り。)つまり、物事の本質を把握する。その作業が抽象化。

Wikipedia 抽象化

 ミスドで読んだけど、思わず口に出して「なるほど!」と呟いてしまった。周りのお客さんには気味悪がられたかも。

 著者のプロフィールによると、神奈川大学教授。専門は、社会思想史、マルクス経済学。

 本書の中には、マルクス経済学に関する言及も多々。私の勉強不足で、マルクス経済学の知識がないから、著者の言わんとすることの全てを理解できてはいないだろう。ただ、知識はなくとも、「抽象化」によって著者の意図は大まかには読み取れたはず。

“つまり、私たちが天才とか、才能と呼んでいるものは、どれだけの知識を頭の中に入れているかではなく、まったくどう見たってつながらないものをグッとつなげていく力のことをいうのです。”P.35

 まさに、その通り! データを集めるだけなら、コンピュータのほうが得意。人間の知的活動には、いかに組み合わせて創造するかが大切。

 余談。本書の話題の中心ではないが、下記の言及が興味深い。

“図書館のことをフランス、ドイツなどでは「ビブリオテーク」と呼びます。イギリスでは「ライブラリー」です。「ビブリオ」とは筒のことです。昔は、羊皮紙を丸くくるめて筒に入れたのです。それを置いていた場所がビブリオテークなのです。これはライブラリーとは違う。「ライブラリー」とは本そのものです。(中略)本というものは作品となり、形となる。本は買ってもらえればそれでよい。読んでもらう必要はない。昔のビブリオは、読んでもらわないと意味がない。ここが違います。”P.308

 イタリア語でも、図書館は bibliotheca(ビブリオテーカ)なんだよね。ライブラリーに当たるlibreria(リブレリーア)は本屋を意味する。

 本は表紙などを付けて、売り物として価値をつけた商品。ビブレリーアに置いてある文献は、商品価値がなくても内容を読むことに意味があるものなのだろう。この違いは大きい。日本の公共図書館の大半は、ビブレリーアよりも貸本屋に近いかもしれない。

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