自作の小説に魅力的なタイトルをつけるノウハウの研究

 私が生まれたとき、両親は私の名前を「宏美」にするか「弥生」にするかで悩んだそうだ。

「弥生」だったら、人生は違っていた気がする。良い悪いは別として、名前の響きは生き方や性格に影響を与えると思う。

 名前は大事。小説の題名もしかり。

 アマチュアの分際で創作論を語る行為もおこがましい気がしたが、創作をしている誰かの役に立つかもしれない。タイトルの決め方について、私のやり方を紹介したい。

 私のやり方が絶対ではない。あくまでも参考として、読んでいただけたら。



【ノウハウ1:題名は最初につけるべし】

 執筆の途中、あるいは書き終えてから題名をつける人もいるが、私は「なるべくプロットの段階で題名を決めておく」のがベストだと考える。

 赤ん坊の命名の場合を考えてほしい。「まだ決められないから、3歳ぐらいまで保留にしておきたい」とはいかない。生まれたら、すぐ届け出る。赤ん坊は名前と共に成長していく。作品だって、題名で方向性が決まる。

 途中で、あるいは脱稿した後に題名を決めれば、推敲時に苦労する。題名に沿った内容に、かなり修正をしなければならない場合が多い。先に題名を決めて、コンセプトでパッケージングしておくことが大事。



【ノウハウ2:名前を決めるためのアイデア・チップ】

 それでは具体的に、どのように題名を決めていくか。

 プロット作成時にキラーンと直観で降りてくれば、その題名が正解。

 でも、何も思いつかない場合は、下記の順番で捻り出す。

・パターン①「〇〇の■■」型の題名

 タイトルを考えるうえで、創作者の間で王道となるノウハウ。

 〇〇と■■には、意外性のある(あるいは正反対の)単語を当てこめる。読者が「何のこと?」と興味を引くような題名に。

 例:村上春樹『海辺のカフカ』、恩田陸『六番目の小夜子』

※「〇〇と■■」型もあり。例:恩田陸『蜂蜜と遠雷』

・パターン② 印象的な文章で

 その作品に相応しい一文を題名に。地の文からの抜粋も可。

 例:篠田節子『ロズウェルなんか知らない』、『すべてがFになる』

・パターン③ 台詞から抜粋

 作品内の重要な台詞を、そのまま題名に

・パターン④ パロディ

 上記①②③でどうしても浮かばない場合は、自分の好きなプロ作家の作品の題名を羅列してみる。それらの題名の魅力について掘り下げる。単語を入れ替えるなどして、自分の作品に応用できないか考える。



【ノウハウ3:題名を閃いた後にする作業】

・作業① 同じ、または酷似した題名の作品がないかチェック

 →どんなに気に入った題名を思いついても、他の人が既に使っているようならNG。ぴったり同じでなくても、酷似も駄目。発表する前に、ネットで確認すること。

・作業②(これはけっこう重要)画数のチェック

 →姓名判断サイトで、商品名として画数をチェックする。

 ↓私はこのサイトを使わせてもらっています。

 きつねの姓名判断 商品名占い

 姓名判断で、画数が良い題名を検討する。

 拙作の例だが……

『心理相談室の内容』を書いた際、最初は『心理相談室の内臓』にするつもりでした。(なぜ「内臓」かは、読んでいただかないとわからないのですが……。ちょっとグロテスクで、作品の内容にもマッチしているか、と)

 画数をチェックすると……ダメダメな診断結果に。

 これはアカン、別の題名を、と思い、『相談室の内臓』、『心理相談室の内側』、『心理相談室の中身』など、いろいろ試してみたのですが、どれも駄目。

 で、『心理相談室の内容』で調べてみると……めっちゃいい!

『内臓』に比べて、見違える結果に。

 ちょっと考えると、『心理相談室の内容』って、引っ掛かりのある題名だよね? 『心理相談の内容』だったらわかるけど、『相談〈室〉の内容』って。

 昔、KIRINは『NUDA』という炭酸飲料を出していた。読み方は「ニューダ」だが、商品名には「ヌューダ」って書いてある。これは、消費者に「ん?」っと引っ掛かってもらって、印象づける作戦らしい。

 引っ掛かりは大事。姓名判断の効果を信じるかどうかは個々の自由だけれども、少し捻ってワンステップ、面白さを増させる切っ掛けになるかもしれない。それにゲンかつぎであっても、幸先の良さそうな題名にしておいて損はない、と、私は思う。(私はけっこう「信じる派」だが)



【その他:注意点】

 難しい漢字を使う題名は、できるだけ避けたいところ。
 読者が覚えやすくて読みやすい題名がベスト。少なくとも、余程の拘りがない限り、ルビを振らないと読めない漢字は使わないようにしたい。

 こんなところだろうか。題名に悩む創作者の一助となることを願う!

カテゴリー: 未分類 | コメントする

モノコン2021 参戦を終えて

 皆さん、こんにちは。

 8月からモノコン2021に参戦していました。一昨日(9/21)に締切を迎え、一息ついたところです。

 応募用の作品づくりのために、いろんな人に助けてもらいました。新たな出会いもあり、楽しかったなぁ。

 以前の記事でもお知らせしましたが、8月に「モノカキ部門・小説宝石賞」に応募して、1次選考を通過しました。

 9/21発売の「小説宝石」に1次通過の作品名・作者名が。(161ページに載っています)

 1次選考(お題「土壇場」)通過者は、最終選考用にお題「相棒」で新たに作品を投稿することに。

 9月上旬の、最終選考用の2作品の初稿をほぼ書き終えた段階で、「小説宝石」の田中編集長のインタビュー記事が公開されました。

「小説宝石」田中編集長に聞きました! 最終選考ではどんな作品が読みたい? 小説執筆の超実践的アドバイスも。

 記事の中で編集長が、「『小説』慣れをしていない人たちもハマるような作品を書ける作家と出会いたい」と。

 わー、私の作品はかなりマニアックやし、「敷居の低さ」はまったく意識せずに書いているよ! どうしよう? 慌てて3作目を書くべき? でも、3作目を書いたとしても、私は私っぽいものしか書けない気がする! さあ困った!

 ありがたいことに、Twitterで編集長に直接質問をする機会を得た。

 ↓私の質問。

↓田中編集長の回答。

 編集長の回答を踏まえたうえで、小説教室の先生への相談を経て、「やっぱり私は私らしい作品で」、「ただし、読みやすいように工夫をする」という方針にしました。

 そのために、

・漢字を減らす

・登場人物の名前を取っつきやすい名前に変更する

 上記2つの工夫をしました。結果、漢字は2割減で、ひらがなに開きました。

↓下記の2作品を投稿☆

 私のできることは、精一杯やりました。11月の結果を待つのみ。他の公募の作品を書きながら待ちます。

 

カテゴリー: 未分類 | コメントする

モノコン2021 応募状況

 カフェでコーヒーを飲んでいたら、雨が降ってきて帰れなくなりました。スマホでこの記事を書いています。

 今日なんて、ほぼほぼ降るやろっ。なんで傘を携行せえへんねん?

 あいかわらず、危機管理能力が極低で生きています。まだ降り続きそうやから、小雨になったら帰ります。(´・ω・`)

 先月、小説投稿サイトmonogataryのコンテスト「モノコン2021」の「モノガタリ部門」に応募したのですが。最終選考に進む40人に選んでいただきました。

https://monogatary.com/notification/notice/270258

 優勝すれば、あの伝統ある文芸誌『小説宝石』からデビューできます。

 残った40人は強豪揃いですが、できるだけのことはやります。

 40人が新たに出された最終選考用のお題で9/21までに作品を投稿します。投稿可能な作品数に制限はないので、私は2作書くつもりです。いろんな人に「読んでください、そして感想・アドバイスをお願いします」と頼んで回っているところですが、肝心の作品がまだ書けてないという(+o+)

 ぼちぼち、自分のできる範囲で精一杯、闘いますっ。

 2作品を書き終わったら、またお知らせしますね。お時間がありましたら、ぜひ読んでやってください。

 ではでは。

カテゴリー: 未分類 | コメントする

的場昭弘『最強の思考法「抽象化する力」の講義』

 

 大学で夏休みの集中講義を受けた気分になる本。

「抽象化」という、すごく知的活動のためにすっごく重要な概念について説明されている。物事を分類して整理する時に、より大きなカテゴリーに括っていく。(たとえば、犬、猫は動物に分類できるけど、犬、猫よりも動物のほうが大きな括り。)つまり、物事の本質を把握する。その作業が抽象化。

Wikipedia 抽象化

 ミスドで読んだけど、思わず口に出して「なるほど!」と呟いてしまった。周りのお客さんには気味悪がられたかも。

 著者のプロフィールによると、神奈川大学教授。専門は、社会思想史、マルクス経済学。

 本書の中には、マルクス経済学に関する言及も多々。私の勉強不足で、マルクス経済学の知識がないから、著者の言わんとすることの全てを理解できてはいないだろう。ただ、知識はなくとも、「抽象化」によって著者の意図は大まかには読み取れたはず。

“つまり、私たちが天才とか、才能と呼んでいるものは、どれだけの知識を頭の中に入れているかではなく、まったくどう見たってつながらないものをグッとつなげていく力のことをいうのです。”P.35

 まさに、その通り! データを集めるだけなら、コンピュータのほうが得意。人間の知的活動には、いかに組み合わせて創造するかが大切。

 余談。本書の話題の中心ではないが、下記の言及が興味深い。

“図書館のことをフランス、ドイツなどでは「ビブリオテーク」と呼びます。イギリスでは「ライブラリー」です。「ビブリオ」とは筒のことです。昔は、羊皮紙を丸くくるめて筒に入れたのです。それを置いていた場所がビブリオテークなのです。これはライブラリーとは違う。「ライブラリー」とは本そのものです。(中略)本というものは作品となり、形となる。本は買ってもらえればそれでよい。読んでもらう必要はない。昔のビブリオは、読んでもらわないと意味がない。ここが違います。”P.308

 イタリア語でも、図書館は bibliotheca(ビブリオテーカ)なんだよね。ライブラリーに当たるlibreria(リブレリーア)は本屋を意味する。

 本は表紙などを付けて、売り物として価値をつけた商品。ビブレリーアに置いてある文献は、商品価値がなくても内容を読むことに意味があるものなのだろう。この違いは大きい。日本の公共図書館の大半は、ビブレリーアよりも貸本屋に近いかもしれない。

カテゴリー: 未分類 | コメントする

モノコン2021に参戦しました。

こんばんは。
久しぶりにブログを更新します。

ソニーミュージックエンターテイメント運営する小説投稿サイトmonogatary(モノガタリー)の年に1度の大きなコンテスト『モノコン』の応募作品を書くのに燃えていました。

https://monocon2021.com/

私が参加したのは『モノコン2021』の中のモノカキ部門で、この部門は今日が締切でした。

お陰様で、2作品を無事に投稿できました。

↓ジャンルがホラー・サスペンスですが、苦手でなければ、読んでいただけると嬉しいです。

1.『心理的瑕疵』
https://monogatary.com/story/251661
事故物件の話です。新婚夫婦が事故物件を購入して住み始めたばかりに、トラブルに巻き込まれます。
ホラーらしき作品をほぼ初めて書いたと言ってよいでしょう。そういう意味でも、記念すべき作品となりました。

2.『死神の夜明け』
https://monogatary.com/story/265966
家の中でタロット・カードの《死神》を失くした実話から着想を得て、小説にしました。
タロット占いの教室で勉強した知識を盛り込んで作成。
※なお、実際に失くした《死神》は、いまだに出てきません。ひょんなところから出てきそうで怖いです。

お祭りに参加できて、楽しかったです。
Twitterで知り合った作家志望の方たちにアドバイスをいただき、いろいろと助けてもらいました。

今後しばらくは、投稿サイトではない公募に投稿する作品の執筆に燃えます。こちらもベストを尽くすつもりです。

カテゴリー: 未分類 | コメントする

8月の予定

■出掛ける予定
・21日(土):カウンセリング
 →家族問題の相談、3回目。 

・29日(日):小説教室B
 →教室の後のお茶会が楽しみ。

■執筆計画(優先順)
・小説教室Aに提出する原稿(原稿用紙換算100枚程度の予定。半分書き終わっている)

・公募用の原稿(8月中旬締切。初稿は脱稿済。規定が6000字までなのに10000字になってしまったので、推敲しながらスリム化を目指す)
 ※初稿を公開しているので、お時間がありましたら、読んでいただけると嬉しいです。
  ご意見・ご感想も大歓迎です。

『心理的瑕疵』
https://monogatary.com/story/251661

・公募用の原稿(8月末締切。半分ぐらい書き進めている。仕上げて応募する予定)

・公募用の原稿(8月末締切。1~2万字。まだ構想を考えている段階)

■他の計画
 ・読みたい本が3冊。

 ・画材店主催のイラスト・コンクールに出したい。8月末締切

カテゴリー: 未分類 | コメントする

7月の総括

 暑い日が続きますね。
 皆さん、お元気でお過ごしですか?

 私は仕事の件で悩んでいます。
 今月、ほぼ決まりかけていた仕事が不採用になりました……。
 派遣会社が派遣先から仕事自体をゲットできなかったそうです。
 このまま露頭に迷うのではないか、と心配しております。

 今月初旬に、人生初の39度超え(39.1度)の熱が出て、びっくりしました。1日ほど絶食して、翌日からウィダー・イン・ゼリーで凌ぎました。数日で回復できたので。

 7月の執筆活動のまとめ。

■投稿・提出済の作品

【小説教室関連】
・小説教室A: 原稿提出(原稿用紙換算100枚程度)
・小説教室B: 原稿提出(プロット1枚 & 原稿用紙換算4枚程度)

【その他】
・なし
 公募作品(250枚)を書いていたけど、7月末締切の公募には間に合いそうにないので、途中で放棄しました。こちらは、ゆっくり書きます。

■執筆中の作品
・小説教室Aに提出する原稿(原稿用紙換算100枚程度)
・公募作品(原稿用紙換算250枚程度)→期限を決めず、ゆっくり書く
・公募作品(原稿用紙換算30枚)→8月末締切。半分書き終わった
・公募作品(原稿用紙換算15枚)→8月中旬締切。初稿は書き終わった

カテゴリー: 未分類 | コメントする

大阪地裁傍聴記 生野区の殺人事件 ⑨ 2020年6月23日 4日目(最終日)

 公判4日目(判決日)。

【判決】
 懲役16年。

※前科/暴力性/強固な殺意/自首/判例による量刑傾向を考慮した結果

【傍聴人(私)の所感】
 4日間を通して裁判を見てきた訳だが、妥当な判決と感じた。

 覚醒剤精神病の影響は明らか。病気の影響に関してどこまで減刑するか、が難しいところ。

 判決を聞いた時、始終蒼い顔をしていた被告人の首元が、更に蒼くなった気がした。2人の弁護人たちも浮かない顔をしている。きっと弁護側には不服な量刑だったのだろう。

 懲役16年。56歳の時の犯行で、拘留期間は減算される。出所は72歳。被告人からしたら大変に長い時間だろうが、遺族にとっては心配も残るだろう。逆恨みによって危害を加えられるかもしれない、と恐れている依属。将来、被告人が刑務所から出てくる可能性を考えると、安心はできない。

 私は法律に詳しくないのだが、刑罰とは何のためにあるのだろうか?
 犯罪者の更生のため?
 あるいは、遺族への償いのため?

 今回の事件の判決で、裁判長の読み上げた主文の内容によると、量刑には「被害者遺族の強い処罰感情がある」ことも加味されているようだった。

 被害者の妹が意見陳述をした際に泣き崩れ、それを見た若い女性の裁判員が貰い泣きをしていた。

 遺族の感情に流されて量刑が重くなることがあって良いのだろうか?

 たとえば殺された人間に遺族がいない場合、悲しむ遺族がいる場合に比べて、加害者の刑罰は軽くなる可能性が高い。

 私は家族と上手くいっていない。現在の司法制度だと、もし私が殺されても遺族の被害者感情の点では量刑は重くならないだろう。「あなたは命が軽い」と世間にジャッジされているようで、少し辛い。まあ、悲しむ人が少なくて済む点では恵まれているのかもしれないが。それでも釈然としない。

 今回の事件で、もう1つ気になる点がある。

 反社会勢力の組員の嶋本(角野が町河の浮気相手だと思い込んでいた人物)については、法廷において捜査・取り調べの有無が一切、語られていない。

 浮気も監視もすべて角野の妄想ではあろうが、なぜ一度も嶋本本人に裏を取ったかどうかが法廷で述べられないのか。何か話せない事情があるのか、それとも、モラル的に反社との接触ができないからなのか。裁判を通しで見ても、把握できる事実はほんの一部である、と思い知らされた。(終わり)

 

カテゴリー: 未分類 | コメントする

大阪地裁傍聴記 生野区の殺人事件 ⑧ 2020年6月18日 3日目

(前回の記事の続き)

【弁護人の最終弁論】
・「木を見て森を見ず」
 →犯行そのものだけではなく、事件の背景を見なければならない。

・本件当時の角野の精神状態の反響の程度を考慮すべき。

・角野は心神耗弱状態にあった。
(強い猜疑心/音に敏感/意欲低下/情緒不安定)

・リスペリドンの服用中断が原因

・鑑定人による精神鑑定で「衝動的/爆発的/暴力的」な性格特性を指摘されたが、性格特性ではなく覚醒剤精神病の影響と明らか。

・心理テストにおいて、攻撃性が指摘されたが、
 →9つのテストのうち、攻撃性が認められたテストは2つのみ。
 →2つのうち1つの実施時、角野はテストに対する意欲に欠けていた。
  (正確に鑑定できているか、疑いが残る)

・客観的犯罪行為(行為対象、結果)
 主観的意思決定(心神耗弱、精神障害の影響)
 情状(反省、自首、再犯の可能性)
 →上記を加味し、相応しい量刑を。

⇒懲役10年が妥当

【被告人の最終意見陳述】
・自分がしたことは許されない
・被害者を死に追い遣った事実に間違いはない
・遺族の想いを受け留め、刑に服したい
・遺族(子供/兄弟)の人生を変えてしまった
 →大変申し訳ない。謝罪したい。

(3日目、終わり)

カテゴリー: 未分類 | コメントする

小中千昭『恐怖の作法 ――ホラー映画の技術――』

 暑くて溶けそうだよね。

 ホラーが書けるスキルがほしくて研究中。

 映画にしても小説にしても、私は心霊モノって怖くないんだよね。
 ホラー映画で急に音が上がったりすると、音にびっくりすることはあるけど。内容とか幽霊のヴィジュアルとかには、あんまり恐怖を感じない。恐怖を感じる脳の機能の一部が壊れているのかも。

 であれば、ホラーを書く素質そのものがないかもしれない。
 何を書いても自分自身が怖くないんだから。どうやったら作品が怖くなるかなんて、わかるはずがない。

 そう考えると、耳が聞こえないのに作曲ができたベートーヴェンは只者ではないね。

 とはいえ、恐怖がわからない分、冷静かつ分析的にホラーを執筆できるのではないか、と一抹の希望を抱いてはいる。

「恐怖とは何ぞや」と探究する私に、Twitterで知り合った方が紹介してくださった本が『恐怖の作法』。

 ホラー映画の脚本を数多く手掛けてきた筆者が、「本当に怖い」映像作品の制作について纏めた本。

 小説を執筆するヒントに、と読み始めたが、映画的な恐怖の見せ方についての言及は、雑学としても興味深い。

 さて、肝心の恐怖についての話だが、筆者の考えが端的に表れる文章を引用する。

P.100
 よく、サイコ・ホラー物を評する時に、「一番怖いのは人間の心だ」などとしたり顔で書かれているのを目にするが、私は問いたい。「あなたは、本当に怖いものに遇った事があるのか」と。暴力的なまでに不条理な存在と対峙した事があるのかと。

 ここが筆者と私の袂を分ける意見の相違点である。

 私は幽霊の存在を信じていない。
〈人間が一番怖いと考える派〉だ。

 仮に幽霊が存在するとしよう。
 存在したとしても、幽霊よりも人間のほうがよっぽど怖い。

 肉体を持っている分、生身の人間のほうが強い。物理攻撃ができる。
 幽霊が肉体を失った元人間であるならば、生きた人間は幽体 + 肉体の両方を兼ね揃える。

 やっぱりちょっと説得されないというか、筆者は「幽霊が怖い」ことに自信を持っているから、幽霊の登場する映画の脚本が書ける気がする。なので、筆者の主張を迎合できない私には、この本に書かれている手法では創作は難しいかもしれない。読み物としては面白いけれども。

 共感した点を引用しておく。

P327
リアルな恐怖とは。自分自身がもしこういう目に遭っていたらどういうリアクションをとるのか。

 読者(または観客)が、登場人物に感情移入できなくても構わないようだ。性格や価値観を読者が受け容れられなくてもOK。ただ、行動の根拠にリアリティがなければならない。だから、ちょっとしたディテイル(仕種、相槌、リアクション)も盛り込むべきだ、と。

 この理屈は納得できる。ホラーは臨場感が命。

 面白い読書体験ができた。
 ホラーを書くスキルの開拓には、いまだに迷子中ではあるが。

カテゴリー: 未分類 | コメントする